セルフポートレイト作品を通じて、『「私」とは何か』について問い続けてきた美術家・森村泰昌による、<令和7年秋の有隣荘特別公開 森村泰昌 「ノスタルジア、何処へ。」 ―美術・文学・音楽を出会わせる―>を開催いたします。
大原美術館との出会いによって、美術家・森村の「私」的な眼差しは何を見つめたのか。その眼差しの旅を、大原美術館の本館、有隣荘、児島虎次郎記念館の3カ所を巡りながら体験していただく、「回遊式の展覧会」です。
それぞれの景観を壊すことなく、むしろ寄り添う姿勢を保ちながら、「美術」「文学」「音楽」が分かちがたく結びついていた在りし日の日本文化の可能性を、分断の時代と言われる現代にいかに活かせるかを探ります。
大原美術館本館の展示作品から選ばれた約25点の所蔵作品と、そのそれぞれに呼応する詩歌を森村流に選りすぐり、森村自身が朗読と映像によって表現します。「美術」と「文学」の間に密接な結びつきがあった在りし日を、「まなざしが、ことばに、こだました時代」と捉え、視聴覚への刺激と共に今の時代に活かします。
朗読・出演:森村泰昌
映像監督・編集:藤井光
音声収録:藤口諒太
※第一章の朗読映像作品「まなざしが、ことばに、こだまする」の視聴には、御自身のスマートフォン及びイヤフォンを使用していただきます。必ずご持参ください。他の来館者のご迷惑となりますので、スマートフォンのスピーカーでの音声再生はご遠慮いただきます。
※なお、朗読映像作品「まなざしが、ことばに、こだまする」全編は、別途会場内のモニターでもご覧いただけます。
大原家が創業したクラレ、クラボウも関わった、1970年開催の大阪万博の「せんい館」。その中に展示された四谷シモン作《ルネ・マグリットの男》を主題とした森村の新作が意外な形で姿を表します。
また1970年万博のために大原總一郎が構想し、実現出来ずに終わった「十二面体音楽堂」のプランに着想を得て森村が制作したオブジェ・スピーカーと、オリジナル音による多重音的な環境を有隣荘内に展開します。1970年の記憶は果たして2025年に、こだまするのか。
<会場内音楽>
声:森村泰昌
作曲・チェロ演奏:中川裕貴
演奏収録:甲田徹
☆第二次世界大戦後、大原美術館の発展を担い、またクラレ社長としては関西財界でも存在感を放った大原總一郎は、1970年の大阪万博に向けて自らの構想を「音の方向性/音の遠近性/音の流動性を生かす新しい音楽会場」として表した。
總一郎は、森を逍遥し、小鳥の声を聞くことを愛した。そこでは音源(小鳥)も聴衆(散策する自分)も移動し、さらに木々の揺らぎなど多様な音が変幻自在に交わりあって音の環境が作り上げられていた。一方、クラシック音楽をこよなく愛し、理解していた總一郎は、それだけに楽器と聴衆の位置を固定した鑑賞形式に、強い束縛を感じてもいた。
それゆえ、大原美術館の分館など、總一郎と共にいくつもの建築を手がけた浦辺鎮太郎による建築案も含めて「音の方向性/音の遠近性/音の流動性を生かす新しい音楽会場」の構想を示したのである。
残念ながら、この構想は、多額の経費、技術的な困難、そして何より1968年に總一郎が逝去したこともあり実現しなかったが、1970年大阪万博での「鉄鋼館」は、その流れを受けたものとも言え、また大阪万博では、大原家が創業したクラボウ、クラレも関わった「せんい館」も未来志向の表現の場として強い存在感を放った。
大原美術館所蔵の関根正二《信仰の悲しみ》(1918年作 重要文化財)を、森村が独自の解釈で作品化し、《信仰の悲しみ》本作とあわせて、児島虎次郎記念館第3室で発表します。「かつての美術」と「今の美術」が出会い、「未来の美術」へとつなげる試みです。
☆大原總一郎は、第二次世界大戦後から自身が逝去する1968年まで、大原美術館が収蔵する作品のジャンルを大きく拡張した。
なかでも日本近代洋画については、現在では2点の重要文化財を含む、近代日本美術史を語る上では欠かすことのできない重要な作品群を収集した。その作品傾向は、西洋で生まれた油彩でありながら、日本の独自性、そして明治後期から昭和戦前期の美術、さらには社会の在り方を強く感じさせる作品が多い。そのことは、西洋を絶対的な規範として、それに追従するのではなく、自らの生きる時代、場所ならではの表現を希求し、それがゆえ自ずとその時代の熱量を身にまとった日本独自の表現を、總一郎は見出そうとしていたと言えるだろう。
料金 | |
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【セット券】 有隣荘+大原美術館 一般 ※森村泰昌展を含む、大原美術館の展示施設(本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館、有隣荘)全てをご覧いただけます。 |
2,500円 |
【セット券】 有隣荘+大原美術館 高校・中学・小学生(18歳未満の方) ※森村泰昌展を含む、大原美術館の展示施設(本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館、有隣荘)全てをご覧いただけます。 |
1,000円 |
【有隣荘のみ】 一般 森村泰昌展の一部をご覧いただけます。 |
1,000円 |
【有隣荘のみ】 高校・中学・小学生(18歳未満の方) 森村泰昌展の一部をご覧いただけます。 |
500円 |
【大原美術館】 一般 大原美術館(本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館)をご覧いただけます。 森村泰昌展は一部をご覧いただけます。 |
2,000円 |
【大原美術館】 高校・中学・小学生(18歳未満の方) 大原美術館(本館、工芸・東洋館、児島虎次郎記念館)をご覧いただけます。 森村泰昌展は一部をご覧いただけます。 |
500円 |
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森村泰昌 もりむらやすまさ
1951年生まれ。大阪市出身、在住。
京都市立芸術大学美術学部卒業、専攻科を修了。
1985年にゴッホの自画像をまねたセルフポートレイト写真を発表。以降、美術史上の名画や往年の映画女優、20世紀の偉人たちなどに扮した写真や映像作品を手がけ続ける。
映画出演や、『生き延びるために芸術は必要か』(光文社新書 2024)、『自画像のゆくえ』(光文社新書 2019)、『露地庵先生のアンポン譚』、(新潮社 2010)『芸術家Mのできるまで』(筑摩書房 1998)など文筆活動にも精力的に取り組む。
2014年には横浜トリエンナーレのアーティスティック・ディレクターを務めた。
主な個展
「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」京都市京セラ美術館 東山キューブ(京都、2022)
「M式「海の幸」—森村泰昌 ワタシガタリの神話」アーティゾン美術館(東京、2021)
森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020––さまよえるニッポンの私」原美術館(東京、2020)
「YASUMASA MORIMURA: EGO OBSCURA」Japan Society(ニューヨーク、2018)
「Yasumasa Morimura. The history of the self-portrait」プーシキン美術館(モスクワ、2017)
「制作協力」
藤井光 ふじいひかる
アーティスト。特定の歴史的瞬間や社会問題を出発点とし、リサーチやフィールドワークに基づき、インスタレーション、映像など多様なメディアを用いて、芸術、歴史、社会の間で展開する作品制作を行なう。
藤口諒太 ふじぐちりょうた
録音家/アーティスト。映画など様々な媒体での録音経験を通じ、録音という行為そのものを社会的論点の記録、多種多様な人々との接続を可能にする手段と捉え、作品制作を行う。
中川裕貴 なかがわゆうき
関西を拠点に活動する音楽家。人間の「声」に最も近い楽器と言われる「チェロ」を独学で学び、独自の作曲、演奏活動を行う。
甲田徹 こうだとおる
サウンドエンジニア、ベーシスト。バンド「白黒ミドリ」、舞台芸術グループ「akakilike」所属。レコーディングスタジオecto主宰。コンサートや舞台、インスタレーション、映像、録音作品など様々な形態の作品に音を介して関わる。
森村泰昌展 記念シンポジウム
「視線の交錯を思考する‐西洋・日本・アジア‐」
森村泰昌
ドリアン・チョン(M+アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)
三浦篤(大原美術館館長)
日時 2025年10月11日(土)
13:30‐15:30
会場 倉敷市立美術館 講堂
聴講 無料
定員 150名(事前申し込みのうえ先着順)
申込 下記「お申込みはこちら」よりお申込みください。
助成 鹿島美術財団