光と有隣荘の中のマティス・・・
倉敷の近代建築を代表する有隣荘。大原美術館の創設者となる大原孫三郎(1880-1943)が1928(昭和3)年に建設した私邸であり、東西両洋の建築様式と意匠、そして、みごとな屋根瓦や庭を特徴とする名建築です。大原美術館は、この類まれな建築物を守り後世に残すべく、通常は非公開としていますが、一方で、倉敷の遺産として活用する機会を設け、期間を限定して一般公開を行っています。
有隣荘は、明るく華やかな洋間、四季折々の自然や光とその陰影を心静かに楽しむことのできる1階の和室、そして、眺望の美しい2階の和室が骨格となっています。このような建築物の特質に重ね、この度は、20世紀美術の巨匠であり、「色彩の画家」ともうたわれたフランス人画家アンリ・マティス(1869-1954)の作品の、その光と色の力に着目します。美術館で鑑賞できるものとは別の、移ろいゆく生きた光が見せるマティス作品の表情。有隣荘の光とそれが織りなす色、そして、画家による光と色の探求とのコラボレーション―とある詩人の言葉「光と幸福の中のマティス」ならぬ、「光と有隣荘の中のマティス」を、お楽しみいただければ幸いです。
図版:アンリ・マティス《『ジャズ』より〈フォルム〉》1947年、大原美術館
1864年、フランスのル・カトー=カンブレジに生れる。はじめは法律家を志すが、病気療養中に絵に親しみ、1891年、画家を目指してパリに出る。初期は写実的な画風であったが、ポスト印象派の画風に触れ、大胆に形を単純化し色彩を強調した独自の画風を切り開いた。1905年、そのような作品をパリのサロン・ドートンヌで展示し、「フォーヴ(野獣)」と評され、20世紀美術に新たな展開を示した。
1917年以降は南仏ニースにも滞在し、主に人物画や室内画を手がけた。1933年、アメリカのバーンズ財団のために壁画《ダンス》を制作後、より線と色彩の単純化が進められ、晩年の切り紙絵へと至る。1954年、ニースで没す。
サイエンスから見るマティス
高い天井に瀟洒なシャンデリアのある洋間。開き窓から降り注ぐ明るい光はこの部屋の美しさを引き立て、また、家具・調度類に施される、当時、ヨーロッパで最新のデザイン動向であったアール・デコの意匠も目をひきます。
ここ洋間では、マティスが制作において、光と色の効果をどのように追求していったのか、その秘密に迫ります。とりわけ、《マティス嬢の肖像》(1918年、大原美術館)にあるほぼ黒色に塗り潰された背景の謎については、近年の光学調査によって少しずつ明らかになってきました。その調査結果の公表は、倉敷では初めてとなります。
デッサンは光を生みだす―ほのかな光の中で素描を見ると、そこには線の味わいと色に相当する光が感じられる、とマティスは書き残しています。
本格的な書院造りのこの和室は、家の主が庭を眺めながら静かに時間を過ごした部屋でした。このような心落ち着く空間では、マティスの素描そのものの力をやわらかな室内の光とそれによる陰影の移ろいとともに味わうことができます。
(会期中、作品の展示替えがあります。)
一階和室が「静」であれば、二階は「動」とし、色と形の饗宴によるマティスの挿絵本《『ジャズ』》が室内を飾ります。マティスは、晩年、「切り紙絵」というはさみで素描する技法に着手します。《ジャズ》は数ある切り紙絵の中の代表作であると同時に、マティス晩年の代表作でもあります。色彩の画家が最後にたどり着く、いきいきとした色と形の表現を、倉敷美観地区の景色とともにご覧いただきます。
(会期中、作品の展示替えがあります。)
料金 | |
---|---|
一般(有隣荘のみ) | 1,000円(税込) |
高校・中学・小学生(有隣荘のみ) | 500円(税込) |
一般セット券(有隣荘+大原美術館入館料) | 2,000円(税込) |
高校・中学・小学生セット券(有隣荘+大原美術館入館料) | 1,000円(税込) |
見出し | ここをクリックして表示したいテキストを入力してください。テキストは「右寄せ」「中央寄せ」「左寄せ」といった整列方向、「太字」「斜体」「下線」「取り消し線」、「文字サイズ」「文字色」「文字の背景色」など細かく編集することができます。 |
会場 | 有隣荘 |
---|---|
会期 |
2022年10月7日(金)~10月23日(日) 会期中無休 |
開場時間 |
10:00~16:00 |
主催 | 公益財団法人大原美術館 |
後援 | 大原美術館後援会 |
見出し | ここをクリックして表示したいテキストを入力してください。テキストは「右寄せ」「中央寄せ」「左寄せ」といった整列方向、「太字」「斜体」「下線」「取り消し線」、「文字サイズ」「文字色」「文字の背景色」など細かく編集することができます。 |